Skip to content

Cart

Your cart is empty

JOURNAL

Vol.5 | 藍と、暮らしと、循環と。— 山㟁卓氏が染める「静けさの青」

ENSULOの新たなプロダクトには、“藍”の色が宿っている。
それは、ただ青いということではない。植物から生まれ、時間をかけて発酵し、手で染め上げられた深く静かな色だ。
ENSULOが出会ったのは、その色を生み出す職人・山㟁卓(Suguru Yamagishi)さん。

岡山の山あいで、藍と暮らす

日本の藍染にはさまざまな手法がある中で、山㟁さんが実践しているのは「灰汁醗酵建て」と呼ばれる伝統的な方法。
藍の一大産地・徳島県で3年間にわたり修行したのち、岡山県の山あいにある古民家に移住し、藍と向き合う日々を送っている。

山㟁さんが藍に魅了されたのは、「日本のスクモでしか出せない藍の色」に出会った時だという。
そして、藍という文化そのものを未来につなぐ活動を続けている。

種から、色になるまで

藍染ができるまでには、長い時間と丁寧な工程が必要だ。

• 3〜4月:種まき
• 5月:苗が10〜20cmになったら植え付け
• 7月中旬:太ももほどに育ったら収穫。茎と葉を選別し、葉だけを乾燥
• 11〜12月:乾燥葉に水分と酸素を加えて数ヶ月発酵させ、“すくも”が完成

春に種をまき、苗を育て、初夏に収穫。
葉を乾燥させ、水と酸素を加えて数ヶ月発酵させることで、染料となる「すくも」ができあがる。
さらに、灰汁やふすまなどの天然素材を加えて仕込み、藍を“建てる”ことで藍液は完成する。


藍と向き合うということ

「染めの作業中は、虫や鳥の声、葉のそよぎ、風の音などに包まれて、ただ無心に手を動かしている時間が好きなんです。」ーと語る山㟁さん。
毎日、藍液を混ぜ、発酵の状態を見極め、藍の“花”と呼ばれる泡の様子を確認する。すべての工程が繊細な感覚に支えられた手仕事だ。

ENSULOのTシャツ1枚を染め上げるために、液に浸しては空気に晒す工程を最低12回以上繰り返す。
藍の色を少しずつ重ねていく、とても静かな作業である。

PIECLEXと藍、ふたつの循環

さまざまなご縁で実現した、山㟁さんとの今回のコラボレーション。
きっかけは、ENSULOの素材である〈PIECLEX〉への興味だった。

「PIECLEXはトウモロコシやサトウキビなどの植物由来のバイオプラスチック。果たして染まるのかー染色を生業とする者として、興味を惹かれました。」
実際に染めてみると、想像以上の発色と色のりで、山㟁さん自身も驚いたという。

「PIECLEXは堆肥に分解されて土に還ると伺い、僕の藍染と同じように“循環するものづくり”だと共感しました。新しい素材との出会いは、僕にとっても発見でした。」

今回染めたのは、2型のTシャツと巾着。
手間と時間をかけて丁寧に染められた藍色は、それぞれ微妙に異なる色味を帯び、静かな存在感を放っている。

青のちからと、これから

「青から想起できるものとして、川や海・空や宇宙といった、人知でははかり知れない存在があります。 藍という植物・藍染という染色には、それらと同じような、人間の考えでは汲み取りきることのできない力があると僕は信じています。」

山㟁さんが染める“静けさの青”は、自然と人の営みが織りなす色。
ENSULOが大切にする“自然と暮らすこと”、“循環するものづくり”と、深いところで共鳴している。

「ENSULOとの取り組みは、社会への問いかけでもあると感じています。そんなものづくりに、ほんの少しでも関われたことが嬉しいです。」

この青が、見る人・まとう人にとっても、何かとつながるきっかけに。

※藍染商品のオンライン販売は、12月1日より開始
※巾着はPOPUPイベント限定商品


藍染職人 山㟁 卓

藍染職人 山㟁 卓(Suguru Yamagishi)

1996年生、東京都青梅市出身。2021–2024年、藍の一大産地・徳島県で修行。
蓼藍の栽培、蒅(すくも)製造、藍建てから染色までを一貫して学ぶ。
2024年春より岡山県へ移住し独立。屋号「藍藝彩日」を主宰。